本研究では, 日本の情報システム開発における, 受託企業の開発プロジェクトの成否と組織文化の関係を調査し失敗防止に向けた提案を行う。
情報システム開発は, 1960年代のメインフレームの登場以来, 開発プロジェクトの失敗が問題視されてきた。近年の調査によると, 開発プロジェクトの失敗は約70%と報告されており, この割合は約10年の聞大きく変わっていない。この問題の解消に向けて, 古くから様々な取組みが研究されており, 能力強化, コミュニケーション改善, および仕組み整備といった活動が実施されてきた。しかしながら, これら多くの取組みにも関わらず, 開発プロジェクトの失敗が大きく減少していないのが実情である。
本研究では, 開発プロジェクトの成否に影響する要素として, 上記の取組みとは異なる視点である組織文化に着目した。また, 組織文化が大きな影響を与えるタイミングとして, プロジェクト計画時の作業に主眼を置いた。
受託企業の開発プロジェクトの成否, プロジェクト計画の精度, および組織文化の関係を調査するために, インターネットアンケートおよび統計解析を利用した。アンケートの作成には, 安全文化の8軸モデ、ルと能力成熟度モデル(CMMI:Capability Maturity Model Integration)を参照した。
インターネットアンケートを実施した結果, 日本の情報システム業界の受託企業に勤務するプロジェクトマネージャ444人から有効なデータを回収した。そして, 統計解析の結果, 開発プロジェクトの成否にはプロジェクト計画の精度が影響を与えていること, プロジェクト計画の精度には組織文化が影響を与えていることを確認した。また, 6人の有識者へのインタビューからも同様の傾向があることを確認した。
これらの結果をもとに, 経営層, PMを管理する上級マネージャ, PM, および組織の改善推進担当に対して, 組織文化向上のための提案を行った。
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