『エミリ・ディキンスン 詩集(ミラー版)ー芸術家を魅了した50篇』(下村伸子、武田雅子との共著)(小鳥遊書房、2021年)において、音楽、アート、絵本、映画、舞踏、詩と小説、エッセイなどのジャンルにおいて、ディキンスン の詩に影響を受けて創作をした芸術家たちをを取り上げた。筆者が分担として論じた芸術家は以下の通りである、音楽においては、アーロン・コープランド、武満徹。絵本においては、エリザベス・スパイアーズと長田弘。舞踏においてはマーサ・グラハム。詩と小説などについては、リチャード・ブローディガン、ウィリアム・スタイロン、マルグリッド・デュラス、吉増剛造、日野啓三、ウィリアム・ハウエルズ、リチャード・ウィルバー、アドリアンヌ・リッチ、辻邦生、アダム・ゴプニック、ロバート・フロスト、ダニエル・キイスである。また本書の前書きや全体の編集も担当した。詩のテキストとして、Emily Dickinson's Poems: As she Preserved Them, edited by Cristanne Miller (Harvard UP, 2016)を用いた本邦初の翻訳を収めている。詩人の草稿の状態を紹介し、詩の解釈については、ミラー版の注釈を紹介、また詩人が使用していた辞書ノア・ウェブスターの英語辞典への言及を取り入れ、当時の歴史的・社会的背景を丁寧に説明している。
また論文「エミリ・ディキンスン に魅せられてー武満徹晩年の5曲」では、作曲家武満徹がディキンスン の詩にどのように感応したのか、特に晩年のエッセイにおける言葉から探ってみた。また武満と交流があった詩人吉増剛造について、どのようにディキンスン の詩を受容し、自らの作品に取り入れているのかを、英文論文"Dickinson's Reception in Japan"(Oxford UP)において論じた。この論文では、日本における翻訳の歴史も概観している。特に翻訳のトーンに注目し、詩人高見順や小池昌代の翻訳を分析している。
Looking Back on the Reception History of Dickinson in Japan
First, we look back on the translation history with a special attention to the significance of tone. David and Mabel Todd's scroll written in Esashi, Hokkaido in , the Poet Jun Takami's elegant juxtaposition of Dickinson's poetry with modern art in the magazine Lady's Graphics in the 1950s, and the poet Masayo Koike's recent translation reflecting on Japanese classic literature are brought into focus.
Second, we witness two influential artists' response. One is Toru Takemitsu, who composed five music pieces inspired by her poems, and the other is the contemporary poet Gozo Yoshimasu, who referred to her poems in his experimental writings.
Third, we report our unique way of appreciation through koh-do (incense ceremony).
Thus, by continuously stimulating our sense of sight, sound, and smell, Dickinson's poetry shows its transcultural power in Japan.
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