近年の認知神経科学分野において, 脳活動や自律神経活動から人間が経験している事象を推測しようとする動きが活発になっており, この技術はデコーディングと呼ばれている。本研究では, このような背景に基づいて, 感情を感じる際の脳活動や自律神経活動の変化パターンと, 実際にその人が感じている感情経験を対応付けて記録し, 感情状態のデコーディングが可能であるか検証することを目指したものであった。本年度は, このための刺激づくり, およびデコーディングを行うためのシステム作りと予備実験を行った。具体的には, 感情を喚起するための動画を100程度作成し, それぞれの動画がどのような感情をどの程度強く引き起こすのかを評定してもらう実験を60名の参加者を対象に実施し, 本実験で使用するための刺激および実験プログラムを作成した。この実験プログラムを用いて, 近赤外光イメージング装置および自律神経活動の測定装置を装着し, どのような脳活動および身体活動が記録されるのかを, 数名を対象に実験を行った。実験結果をもとに, プログラムや装置の最適なパラメータになるよう調整をおこなった。本実験は, 開始された段階であり, デコーディングシステムの開発には, まだ時間を要する段階である。
加えて, 感情の認識には, 少なからず個人差があることに注目し, デコーディングの成否と個人の感情認識能力の間にどのような関係があるのかを検討するためのプロジェクトを開始した。このプロジェクトは, 国立国際医療研究センター国府台病院の研究チームとともに実施しているものである。種々の情動関連疾患を対象にした研究計画を立案し, 研究倫理委員会から研究開始の承認を得た。これに先立ち, このプロジェクトで基礎データとして必要になる感情と身体感覚のマッピング課題の予備実験も実施し, 有益なデータを得た。
In the field of cognitive neuroscience, decoding approach for understanding what people feel by brain or autonomic activities is becoming popular. In this study, we tried to develop the system for recording and predicting emotional states by brain and autonomic activities. 60 participants watched 100 video clips and evaluated what emotions occurred. Based on this results, stimulus sets for evoking emotions were prepared. Using these stimulus sets, we measured brain (NIRS) and autonomic activities while participants were watching the stimuli. Development of decoding system is just started and we need much more time to refine the system.
Also, we started new collaborating project with members of Kohnodai Hospital, National Center for Global Health and Medicine. In this project, we focused our attention on individual difference for recognizing emotion. This point of view is highly important for developing the emotion decoding system. Pilot studies for this project about the relationship between emotion and bodily feelings were done and valuable data were obtained.
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