日本の歴史的な企業データを用いて, 自然災害の企業や地域に対する影響を分析した。特に地域的, 空間的な側面から計量分析した。最近の自然災害の経済学において提唱されているのは「創造的破壊」仮説である。自然災害による大規模なショックのため, 資本は破壊されるが, 災害を機に資本が新しく更新され, 古い質の低い資本が一掃されるため, 災害後は災害前よりも資本の質が上がり, さらには経済成長をもたらすという仮説である。しかし, 自明ではなく, 産業集積地帯であれば集積の経済により, 高水準の資本が集まっているため災害にも強く破壊されにくい可能性がある。したがってこの仮説は自明ではない。多くの最近の研究ではマクロレベルや集計されたレベルが多く, 企業レベルでの検証も進んでおり, ある程度, 創造的破壊仮説は支持されている。しかし, 資本の質を直接的に検証した論文は他にない。本研究では, 横浜市と大阪市における製造業企業の機械の質に関するデータを収集し, 1923年の関東大震災前後での機械の質の成長を計量分析した。結果, 被災度合が大きい地域にある横浜市内の工場ほど, 資本の質の向上が大きいことが分かった。同様の分析を大阪市の工場のデータを用いて横浜市と比較した。この結果も資本の質の向上が大きいことが結論付けられた。いわゆる創造的破壊仮説の計量分析である。
This research project investigates the impact of natural disasters on regional economy. Our focus is on the improvement of capital quality in manufacturing firms after the natural disaster. Using the micro-level data of Japanese manufacturing, we test the impact of the earthquake of Tokyo in 1923. As a result, we find the growth of capital after the earthquake.
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