本研究は、広範に収集された用例を検討することによって、ラテン語語彙研究に貢献することを目的としたものである。具体的には、Bayerische Akademie der Wissenschaftの一部門であるThesaurus Linguae Latinaeにおいて、同名のラテン語辞典Thesaurus Linguae Latinae(以下TLL)の編纂に参加し(2022年7月〜9月、2023年3月)、「再び見る」を主たる意味とする動詞revideo、「再び訪れる、再び見る」などの意味を持つ動詞reviso、「割れ目、隙間」などの意の名詞rimaの調査および項目執筆を行い、また「振り回す、回転させる、転がす」などの意味を持つ動詞rotoの調査に着手した。TLLは、後2世紀半ばまでのあらゆるラテン語テクストからは全単語の用例を網羅的に収集し、さらに後600年頃までのテクストについてもかなりの程度まで捕捉するなど、他の如何なるラテン語辞典よりも幅の広い時代と作家の用例を基礎資料としている。それはこの辞書の最大の強みのひとつであり、たとえば今回の研究においても、意味のみならず形態上からも混同が起こりやすいrevideoとrevisoの用例の判別と整理に効果を発揮した。これはもちろん、項目執筆にも反映されている。
なお研究担当者(小池)がTLLの編纂に参加するのはこれが最初ではなく、2015年から継続して行っており、一部(2015年10月〜2017年9月、2018年度)は慶應義塾大学からの研究助成(前者は福澤基金・国外留学、後者は学事振興資金)を受けている。本研究はそれらの従来の研究に連なるものである。上に示した4つの単語のうち、revideoとrevisoは2021年から既に作業を続けていたものであり、今回の研究で、編集責任者の査読も済み、項目執筆が一通り完成するに至った。来年以後に刊行されるTLLの分冊に掲載される予定である(ただし辞書である以上、所定の分冊におさめられる単語の項目が全て揃うまでは刊行が不可能なため、本報告書執筆時点では正確な出版時期を記すことができないことをお断りしておきたい)。またrimaについては、いったん項目を書き上げたあと、編集責任者からのアドバイスを受けて、第2のバージョンを仕上げた段階である(2023年3月末時点)。今後、さらなる修正が続く可能性がある。まだ調査の最初の段階であるrotoとあわせ、引き続き調査・研究を進めて行きたい。
The present study aimed to contribute to Latin lexicographical research. Specifically, at the Thesaurus Linguae Latinae, a division of the Bayerische Akademie der Wissenschaft, I participated in the compilation of the Latin dictionary of the same name, Thesaurus Linguae Latinae (hereafter TLL), researching and writing entries for revideo, reviso, rima, and roto (more precisely, the research had just begun on the last word). TLL has a wider base of examples from a wider range of periods and authors than any other Latin dictionary, with a comprehensive collection of examples of all words from all Latin texts up to the mid-2nd century AD, and to a considerable extent from texts dating back to around 600 AD. This is one of the greatest advantages of TLL, and in this research too, for example, it was effective in identifying and organising examples of revideo and reviso, which are easily confused not only in terms of meaning but also in terms of form.
This is not the first time that I have participated in the compilation of TLL; I have continued to do so since 2015, and part of the work has been funded by a research grant from Keio University. The present research is linked to those previous studies.
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