本研究では, 結晶のねじれ成長現象を自在に制御し, 多様な物質におけるねじれ結晶の集積化・階層化を達成するとともに, マクロなキラリティによる新規な機能開拓を目指した. 成果(1)として, サブミクロン~シングルミクロンスケールのねじれ結晶集積体の形成を達成し、その光学特性を評価した. 二クロム酸カリウム-ポリアクリル酸系において, ガラス基板へのディップコーティング法によって基板に沿って配向・集積したねじれ結晶集積体を構築した. この集積体はねじれピッチおよび方位に対応してレーザの干渉を引き起こすことが示された. また, 成果(2)として, 有機溶媒および高分子マトリクスを用いた有機結晶におけるねじれ形成法を確立した. 有機溶媒の蒸発に伴うピレンの結晶成長において高分子の共存によってマクロなキラリティをもつ構造体が形成された. 高分子と結晶表面との相互作用が成長のユニットを傾いた形状へと変化させ, ねじれ成長を生じさせると考えられる. さらに, この手法の有効性を他の有機分子結晶においても確認した. 以上のように本研究では, マクロなキラリティの機能開拓に向けて, 微小サイズのねじれ結晶の配向・集積手法を確立するとともに, これまで水溶液系のイオン性結晶に限定されていたねじれ結晶成長を有機溶媒系の有機分子結晶へと拡張することに成功した.
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