日本の社会学において, 「外国人」もしくは「外国につながる人びと」に関する研究がみられるようになったのは, 概ね1990 年代以降のことである。このうち, 在日韓国・朝鮮人(在日コリアン)を中心とする「オールドカマー」については, 社会内部のマイノリティ集団への関心を契機に, 差別, 民族アイデンティティ, 生活と意識, 集団間関係の諸相などが研究テーマとして取り上げられてきた。また, 1980年代以降, 新たに海外から渡日する外国人が大きく増加したことから, そうした「ニューカマー」への関心も高まり, 労働, 法的地位, 家庭, 教育の問題, 国や自治体の施策など, 幅広いテーマで研究が蓄積されている。
こうした問題群を扱う研究は, 「国際社会学」としてくくられることが多く, 海外における移民研究(migration studies)の枠組みに照らして理解する試みも活発である。とくに近年では, グローバリゼーションを背景とするトランスナショナルな現象に関心が集まっている。国民国家の閉じられた社会空間には収まらない存在として, 移住者とその家族をとらえることはたしかに有用である。しかし, 日本の文脈では, そのような視角ゆえに, 移民の背景をもつ人びとを日本社会の構成員ととらえる視点が乏しくなりがちでもある。
そこで, 本シンポジウムでは, トランスナショナルな現象をとらえる視角と日本社会におけるマイノリティという視角との関係を意識しながら, 外国につながる人びとをめぐる諸問題について, 各報告者・参加者とともに考えていきたい。その際, 「移民研究」や「国際社会学」という領域と他の研究領域(ジェンダー, 教育, 家族など)をどのように結びつけていくかという課題にも取り組むことができればと思う。
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