管理会計を含むマネジメントの理論は、平均的な企業または理想的な企業を前提として構築されている。一方、現実の企業は、それぞれ異なる環境の下で運営しているため、理論とは異なるマネジメント体制で運営されており、この意味で理論と実務は乖離している。このような問題意識に基づき、企業マネジメントの実態の調査に関する研究を行い、2021年度は以下の２つの成果をあげた。
１．日本会計研究学会の全国大会で、「管理会計思考の発展と継承」をテーマにした統一論題の座長を務めた。この統一論題では３人の研究者が、京セラのアメーバ経営の他社への導入、管理会計の観点における移転価格課税の検討課題、人間心理と管理会計の相互の影響ついて報告を行ったが、統一テーマに沿う形の報告になるように、翌日の質疑も含めコーディネートを行った。これらの報告は，過去の研究を土台にしているという意味で「継承」ではあるものの，単なる延長線上にある漸次的な変化ではなく，大きな変化をもたらす影響という意味で「発展」と位置づけている。最終的には、座長としてこのセッションを総括する論文を執筆したのが第１の成果である。
２．管理会計と財務会計の研究上の接点は少ないが、管理会計の実務には財務会計の基準が影響を与えている。たとえば、管理会計の研究対象である利益については、会計基準がその計算プロセスを定めているために、単純に収益から費用を控除した値としてとらえるのではなく、税効果会計や連結上の被支配株主に帰属する当期純利益などの影響も考慮して検討すべきである。このような問題意識のもとで、財務会計上の基準が管理会計にどのような影響を与えているのかについて考察した論文を執筆したのが第２の成果である。
The outcomes of this research are two papers, which subjects are described below.
１．I presided at the plenary session, "The inheritance and development of management accounting thought", in 2021 Annual Conference of Japan Accounting Association. Though three academics presented papers about ameba management, transfer price taxation and human psychology at this session, I also wrote the paper about conditional implication of this session's theme.
２．Although there are few contact points between management accounting research and financial accounting research, financial accounting standards have influences on the management accounting practices. I wrote an article about these influences.