地方官人は、律令国家の全国支配の前線を担う存在である。本研究課題は、特にその外縁に位置するような下級官人に焦点を当てて、日唐の制度を比較することを目的とするものである。
研究着手年度にあたる今年度は、まず、日本と中国における関連研究および史料の収集と整理に重点を置いた。これによって、改めて基礎的な理解を深めるとともに、本研究課題における重要な論点である税の免除を始めとする身分的諸特権についての論点を整理した。なお、地方で官人身分を持つものは在地における有力者でもあり、中世に自律的な活動を行う階層へと接続するとの見方から、古代史のみならず中世史研究からも注目されている。このため、中世史にも目配りしながら関連研究の収集を行い、古代史研究との論点の共通性や齟齬について整理を進めている。
また諸史料の分析から、官人への給与支給が実を失っても、税の免除特権を得ることによって収奪される側から収奪を行う側に立つことが重要であったことを確認した。さらに日本の史料を中心に下級官人関係史料の整理・分析を進め、下級官人身分を持つ者が地方で力を持つことはもちろんのこと、中央官人としても統制されるべき存在であったことを確認した。これらと並行して、奈良・名古屋において資料・情報収集を行い、本研究課題における古文書や典籍史料の活用の在り方について理解を深めた。
唐代史については、今年度成果としては調査のあたりを付ける程度に留まっているものの、吐魯番文書などを中心として引き続き検討を進めてゆきたいと考える。地方官から中央への登竜門としての官職や、一方で中央からの左遷による地方官への任命などを通じて、唐代における地方と中央との関係を検討することも、重要な課題であることを認識した。
According to the collection and categorization of research related to this subject has deepened our understanding of the provincial officials privileges, such as tax exemptions. And by analyzing historical materials in ancient Japan, we confirmed that when the provincial officials received privileges, their position changed from being seized to seizing it in local society.  In addition, those with the provincial officials status were to being controlled by the Ritsuryo state.