石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡から出土した更新世の人骨資料についての研究を進めた。
まず, 個体識別が可能であった4個体分の頭骨のうち, 3個体分について, デジタル復元を完成させた。デジタル復元は, 第一段階としてもともと残存する骨の元の位置関係を再現し, 第二段階としては欠損している部分を残存する反対側を鏡像反転したり別個体の同一部位のデータを用いたりして補った。これらのデジタル復元作業の過程では, 随時3次元プリンターにて1/2サイズのモデルを出力し, 復元の状態を確認した。
デジタル復元が完成した3個体分の頭骨について, 実物の骨では計測できない計測項目について, デジタル復元結果を利用して推定値を求めた。これらのデータをもとに共同研究者と形態分析を進めた。さらに, このうち全身の保存のもっともよい4号人骨頭骨については, デジタル復元結果を3次元プリンターによって出力し, この上に標準的な軟部組織厚さを粘土で重ねて行く手法によって, 生前の顔貌の復元を試みた。この際には形態分析の結果を参考にし, 復元像を完成させた。復元像には, 鼻根部が強く陥没する特徴や, 顔面部が低く幅広である特徴など, 4号頭骨の形態特徴がよく反映された。この4号頭骨についての一連の研究過程を論文としてまとめ, 日本人類学会の機関誌Anthropological Science(Japanese Series)に投稿した。
また2016年から2017年にかけて複数の関係する研究者に依頼して沖縄の旧石器人骨の研究の現状を伝えるべく琉球新報紙に掲載した連載記事を, 同じくAnthropological Science(Japanese Series)誌の2017年12月発行の125巻2号に掲載した。さらに2018年4月から6月にかけて国立科学博物館にて開催される企画展に展示するべくデジタル復元頭骨のプリントアウトを作成するなど, 白保竿根田原洞穴遺跡出土人骨の研究の重要性を広く社会へ向けて伝えるべく努めた。
Three human skulls excavated from Shirahosaonetabaru Cave Site, Ishigaki Island, were digitally reconstructed. One of the three skulls (the Shiraho 4 individual) was further subjected to facial reconstruction using the digitally reconstructed skull model printed by 3D printer.
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