2018年度中の上梓を目標として『マラルメ・その時代と詩人』というタイトルの書物を著す。これまでの研究成果をまとめつつ, 半分くらいの分量を書き 下ろしとすることで, 30万字ほどの分量を予定する。たんに個々の作品の紹介・解説に止まるのではなく, 「ある論題を論証する」ということから逃げない叙述を心がけて, マラルメという詩人の総合的把握を目的とする。文学研究という枠に準拠しながらも, 専門研究者に向けるのではない, 広く人文書 として読まれる書物を目指す。そのために, 注はなるべく少なくし, 本文中で展開できる議論は本文に組み入れる努力を行う。
マラルメという詩人は, 「絶対」「理想」を常に口にし, 当時のフランス社会において類例を見ないほど徹底した無神論を一生貫いた。その一方で彼は, きわめて社交的な精神を保ち, 多くの後進作家から慕われた。厳格さと温和さのこの不可解な混合がどのように形作られたのか, 時間軸に沿って記述・分析し, そこにある矛盾を解きほぐす。
狭い意味での文学史に, 本書の問題系を定位すれば次のようになるだろう——すなわち, ロマン主義の模倣から出発したマラルメの詩が, ボードレール的な後期ロマン主義を経て, いかにしてロマン主義を離脱し, 次世紀の文学的前衛へとつながるような先鋭的な言語の運用を生み出したのか。これに関係する問題として, フランスにおける韻文の地位, また散文詩というジャンルの問題も喚起されることになる。
2017年度は全十章のうちの第六章となる「地上と死」に関する部分の執筆を進め, おおよそ10万字ほどの草稿を準備した。 執筆に必要な資料調査のためにパリのジャック・ドゥーセ図書館への出張を行った。
Recherche sur Stéphane Mallarmé. Pour les détails, voir mon résumé en japonais.
Research on Stéphane Mallarmé. For details, refer to my Japanese summary.
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