我が国の漢学を平安時代半ばから江戸時代末に至るまで牽引した家系に清原家がある。清原家は経学を専門とする大学寮明経道の博士家の一で, 家系内に漸次蓄積した貴重な蔵書を近年まで保持し続けた。現在その蔵書は京都大学附属図書館に清家文庫として所蔵されている。清家文庫蔵書は日本漢学の実態を考察する上で最も重要な資料群だが, 慶應義塾図書館にはこれを補完し得る清原家関係の古写本・古刊本が数多く所蔵されている。
今回, 標記の研究の一環として, 図書館所蔵の清原家旧蔵書及びその関連書籍について, 成城大学文芸学部准教授の山田尚子氏, 本塾大学院文学研究科後期博士課程学生の斎藤慎一郞氏の助力を得て書誌学的調査を網羅的に行なった。その研究成果の一部は, 2017年5月29日(月)から6月24日(土)にかけて, 慶應義塾図書館(三田)1階展示室に於いて開催した「清家展」と題する図書展示会の中で公表した。また, その後の調査を含めての研究成果は, 『書物学』第13号(勉誠出版, 2018年6月刊)に掲載する予定である。
図書調査と並行して, 清原家儒者による経学研究書を綿密に読解することも行なった。経書の中で国文学への影響の最も大きいものは『毛詩』である。室町時代の大儒, 清原宣賢(1475-1550)が書写・加点に関わった『毛詩』の静嘉堂文庫蔵本及び大東急記念文庫蔵本を用いて, その訓点を読み解き, 更にその訓点の拠って来たる根拠を唐の孔穎達の『毛詩正義』や, 宣賢による『毛詩』の注釈書『毛詩抄』などを援用して解明することに努めた。こちらの研究成果は, 2018年度中に和漢比較文学会の例会で口頭発表する予定である。
I conducted a complete survey of those Japanese manuscripts and imprints of Chinese texts held in Keio University Library which had some connection to the Kiyohara lineage. Furthermore, at the same time, I transcribed and analyzed the vernacular reading glosses (/kunten/) found in manuscripts of the /Mao Odes/ produced by Kiyohara scholars.
|