太陽光や風力などの再生可能エネルギーで代替出来ないエネルギーであるジェット燃料を, 藻類由来のオイルで代替することが航空業界から求められている。ジェット燃料の原料として用いることができ, 凝固点が低く寒冷地でも使用することができるオイルを生成する藻類の幅を広げるために, オイル産生藻類に炭素鎖長が8-15(C8-15)の脂肪酸を生成させる遺伝子改変技術の創出が求められている。
脂肪酸の炭素鎖伸長時に結合しているアシルキャリアープロテイン(ACP)に結合し, 中鎖脂肪酸の段階で脂肪酸をACPから切り出すチオエステラーゼ(TE)遺伝子を導入することが有効な手段だと考えられている。しかしC8-12の脂肪酸を選択的に切断するTE遺伝子をChlamydomonas reinhardtiiに導入した研究(Blatti et al.,2012)ではC. reinhardtiiのACPが, 外来のTEと結合できなかったためにC8-12の脂肪酸鎖の蓄積が起きなかったと考えられている。そこから私は, C10-14の脂肪酸を切り出すCuphea lanceolataのTE遺伝子(ClTE)と同ACP遺伝子(ClACP)を同時にC. reinhardtiiに組み込むことによってC10-14の脂肪酸の割合を増加させる事を目指した。
ClTEのみ発現するカセット(TEc), ClTEとClACPを同時発現するカセット(TEACPc), 及び, これらClTEとClACPのプラスチド移行配列をC. reinhardtiiの対応するプラスチド移行配列に変えた力セット(mTEc, mTEmACPc)の4つを作製し, C. reinhardtii TKAC1017株をエレクトロポレーシヨン法により形質転換し, 核に遺伝子カセットを導入した。薬剤耐性を指標に得たそれぞれの形質転換体から, 導入カセットの全長を保持している株をコロニーPCRによって選択し, 遊離脂肪酸の鎖長をLC/MSで測定し分析した。それぞれの遺伝子カセットを導入した株の平均値で比較した結果, TEc, mTEc, TEACPcを導入した形質転換体(TE, mTE, TEACP)の全体の脂肪酸に対するC12:0の割合はWTに比ベて有意に減少し, TEのC14:0の割合はWTに比べて有意に減少した。TEACPに比べmTEmACPのC12:0の割合が有意に上昇し, ClACPを共導入することでClTEがC12:0の脂肪酸を切り出すことが出来ることが示唆された。
|