オートファジーは飢餓時に細胞質のオルガネラやタンパク質を液胞で低分子へとバルク分解する機構であり, 細胞は分解されたアミノ酸をタンパク質合成に再利用することで飢餓に応答すると考えられている。緑藻"Pseudochoricystis ellipsoidea"は, 窒素栄養欠乏(-N)下で中性脂質の一種であるトリアシルグリセロールを蓄積する。また, 真核生物では飢餓時にオートファジーが誘導されることから, "P. ellipsoidea"の-N下においてもオートファジーによるタンパク質分解がおこり, 分解されたアミノ酸はタンパク質合成に再利用されている可能性がある。一方で, この際にタンパク質量とアミノ酸プールが顕著に減少することから, 分解されたアミノ酸はタンパク質合成以外にも代謝されていることが考えられるが, 利用先については知見が乏しい。
本研究では"P. ellipsoidea"の-N下におけるタンパク質分解の仮説を検証し, さらに分解物がどの代謝物へ再利用されているのか明らかにすることを目的とした。唯一の硝酸源である15N03を用いてタンパク質を窒素安定同位体標識させた細胞を作出し, -N下に移行後, 経時的にタンパク質と遊離アミノ酸のラベル率を測定したところ, 遊離アミノ酸のラベル率が増加し, タンパク質分解が確認された。さらに、アミノ酸以外に同位体が検出された窒素代謝物を網羅的に解析したところ, ArgやLysの分解経路上の物質から標識が検出された。このことから, 窒素がない状態においていくつかのアミノ酸は, アンモニアとして窒素源を排出するかアミノ基転移をすることで, 炭素骨格へ分解されると推測された。
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