中小病院がより地域に認められ、良質のサービスを展開する施策を看護師満足度（employee satisfaction = ES）の視点から考察する。
看護師は、患者に接する時間が最も多く、提供する医療サービスの質といった点からも重要な役割を担っており、病院を運営していく上で看護師の定着や確保といった点は大きな課題となる。その中でも、中小病院における離職率は大病院と比べると高く、中小病院を経営する上で看護師の離職は大きな問題になると考えた。
看護師の離職の原因としては、結婚や出産等の自身の問題とともに、勤務時間が長い、超過勤務が多いといった医療現場の問題といったものが離職の理由となっている。
このような看護師の現状というものを理解しなければ、医療現場の改善を望むことは難しく、看護師不足による更なる過酷な労働状況を生み出すサイクルに陥っていくことが考えられる。
また、看護師の労働市場が「売り手市場」ということから、看護師が諸条件により色々な病院を比較して、自分の希望に合った勤務先を選択できる点があり、看護師が魅力を感じない病院は、ますます看護師不足が加速し、現場が疲弊することによって離職が進む場合や最終的には病棟が閉鎖されるケースもある。よって、看護師の離職は、病院の経営や提供する医療サービスに大きなインパクトを与える。このような現状を踏まえた上で、私は病院を経営する上で「看護師満足度を向上させる仕組み作り」が必要だと考えた。
看護師不足を解消する為には、魅力的な医療機関を構築することが必要である。魅力的な医療機関を目指すためには、人材を引き付ける医療機関であると同時に、現在勤務している人材を長く勤めたいと思う医療機関にしなければならない。特に中小病院にとって、いかに既存の看護師を引き止め、定着させていくかが、安定的な医療サービスを提供する為の大きな要因になってくる。
中小病院は、大規模病院と比べて経営資源が少なく、中でも、場所が悪い、医療サービスの特色が打ち出せない、労働環境が悪い中小病院においては看護師の採用が難しい面がある。
このような中小病院の置かれた環境を考慮したうえで、既存の看護師のリテンション対策と看護師の採用を別々に分けるのではなく、一つの包括的な解決策として考える必要性があると考えた。
よって、本論文では、
1.既存の看護師のES向上
2.看護師の採用
の双方を視野に入れ、看護師満足度の向上について考察する。

修士学位論文. 2011年度経営学 第2712号