最近のITを代表する言葉である「クラウドコンピューティング」。2011年の1年間で日経新聞朝刊に388回も登場し、今最も盛り上がっていると言っても過言ではありません。ただ一方でこのクラウドコンピューティングという言葉、バズワードではないかと考えている人が多く存在するのもまた事実なのです。近年、ITは急速に進歩しており、その目まぐるしく進む様子を称してドッグイヤーとも呼ばれています。そのITの進歩に伴い、新たな呼称が次々と生み出されては消えていく。そんな状況を鑑みると、クラウドコンピューティングもその一つではないかと思われるのも致し方ありません。このような混沌の中、グーグル、アマゾン、セールスフォース・ドットコムなどのネット企業に加えて、マイクロソフト、IBMといった海外の大手ITベンダーからNTTグループ、富士通、日立にいたる国内の大手ITベンダーまで、時流に乗り遅れまいと何かしらのクラウドコンピューティングを謳ったビジョンやサービス、製品を発表しているのが現状なのです。
そこで、これら混沌としている現状をはっきりさせる必要があると考えました。本研究では始めにクラウドコンピューティングの本質を明確にします。それによりクラウドコンピューティングに対する考えを統一させ、クラウドコンピューティングの近未来における方向性を明示していきます。
さらに示したクラウドコンピューティングの方向性において、経営におけるクラウドコンピューティングの活用方法に焦点をあて、事業戦略上どのようなことが重要になるのかを事例を通して、抽出していきます。そして、そのような過程を経て抽出したクラウドコンピューティングの要諦が、ITベンダーによる最適なクラウドサービス構築に寄与することを期待します。

修士学位論文. 2011年度経営学 第2681号