本研究は,日本の防災対策における意思決定システムの問題を取り扱う。特に防災組織・機関の意思決定者による避難命令をはじめとする意思決定の判断を下すといった意思決定のシステムに注目している。本研究では,この意思決定システムの問題に対する解決策を提案する。
確かに,1995年の阪神・淡路大震災以降,科学技術の発展,国民の防災意識の向上により,日本の防災対策は進歩している。しかし,2004年の新潟県中越地震では,ライフラインの機能不全が発生し,被災地は壊滅的な被害を受けた。しかし,こうした状況下においても,防災組織・機関の意思決定者は,正確で迅速な意思決定が求められる。
まず,わが国の防災対策に関する現状分析を行い,問題の所在を特定した。次に,その問題に対する解決策を提案し,仮説に基づき検証を行い,評価した。現状分析では,有識者,被災自治体及び住民に対する聞き取り調査を実施した。そして,根本原因分析などの手法を用いて分析を行った。その結果,日本の防災組織・機関における意思決定システムの問題が明らかになった。
本研究では,「大規模地震など重大な自然災害が生じた場合,多様な手段で災害情報を入手する手段を確保し,それらの災害情報を有効に分析する手法が確立されれば,避難命令をはじめとして,的確な意思決定を下すことが可能となり,減災に役立つ」という仮説を立て,被災経験のある旧山古志村(長岡市)での小規模社会実験により仮説を実証した。新たな日本の防災の未来を切り拓くために,情報収集・分析のプロセス,つまり,災害インテリジェンスの導入により,減災の実現を目指す。
|