本稿では純粋持株会社であるニチレイ，宝ホールディングス，わらべや日洋ホールディングス，日本電信電話の4社の個別財務諸表により，①純粋持株会社が所有する資産の状況，②純粋持株会社の収益の源泉，③純粋持株会社の収益水準の3点を検討した。純粋持株会社の所有する資産の大部分は関係会社株式であり，主な収益源が受取配当金であることと整合的である。それ以外で大きな金額なのは関係会社への債権であるが，受取利息は収益の中でそれほど大きな割合を占めているわけではない。損益計算書の営業収益と営業外収益に計上されている科目については，園田（2007，p.161）の結果と変わらないが，グループ外部からの収益が計上される場合もある。また，特別利益として投資有価証券売却益や関係会社株式売却益などが計上されていた。純粋特殊会社単体での配当性向については，年度により変化する企業も多く，利益の小さい年度の配当のためにその他利益剰余金が負債純資産合計中で大きな割合を占めており，当期純利益のうち50％強が配当されていない（園田，2007，p.163）ことと整合的である。

髙橋郁夫教授退任記念号
論文