夫の所得と妻の所得は, 子どもの数に関する意思決定において異なる影響を持つと考えられる。妻が育児を担うことが前提なら, 夫の所得の上昇は主にプラスの影響を与える所得効果が働き, 妻の所得の上昇は主にマイナスの影響を与える代替効果が働く。本稿は, 労働所得に着目し, 賃金率を用いて, 夫や妻の所得の上昇が子どもの数にどのような影響を与えるかについて, 慶應義塾大学「日本家計パネル調査」(JHPS/KHPS2004-2015)を用いて実証分析を行った。
賃金率については, 回顧データから把握した実際の就業経験と個人属性に基づき推定した。また, 親の賃金率と子どもの数の同時決定の内生性をコントロールするため, 操作変数法を用いた。さらに, 観察できない世帯の異質性と時間を通じて変化する観察できなかった変数の影響をコントロールするため, パネル固定効果モデルを利用した。分析の結果, 夫の賃金率の上昇は, 子どもの数に対して有意にプラスの影響, 妻の賃金率の上昇は子どもの数に対して有意にマイナスの影響を与えることが観察された。操作変数法を用いたポアソンパネル固定効果分析とパネル変量効果分析による頑健性チェックを行った結果, 本稿の分析結果は, 頑健であることが確認された。
This study utilizes Japanese household survey data, the Japan Household Panel Survey, to identify the different impacts that a husband and wife's labor incomes have on fertility. The imputed wage rates are estimated based on the employment experience, education attainment, and geographic information. In order to control the endogeneity and heterogeneity, the instrumental-variable method combined with panel fixed effects estimation are applied. The results show that, the husband's wage rate has a positive effect on fertility, while the wife's wage rate has a negative effect on fertility.
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