わが国の現行保険業法は同一の保険会社が生命保険事業と損害保険事業とを兼営することを禁じているが,平成4年の保険審議会答申は,原則的に兼営を認めて行くべき旨の提言をしている。これは,保険商品が多様化し,近時めざましい発展を見せている傷害保険・疾病保険・介護保険といったいわゆる第3分野の保険については,生命保険会社および損害保険会社がそれぞれ主務大臣の許認可を受けて現に販売している商品に等質化現象が起こり,生損保兼営禁止の根拠とされるリスクの性質・期間の差異が認められ難くなってきているという状況を背景とする提言である。たしかに,そのような状況の下で競争による効率化および消費者の保護をはかるためには,根拠を欠く障壁を取り除く必要があるが,しかし,そもそも第3分野の保険事業は,生命保険・損害保険という法律上の2分法の不合理性から問題状況を作りだしてきているものであり,生損保兼営問題の適切な解決のためには,単に自由化という政策論だけではなくて,保険事業に対する法規制の枠組みの理論的な再構築が問題になる。
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