本論文では, 手すりを伝う感覚による触覚ナビゲーションシステムHAPMAPの提案と, そのプロトタイプとして開発したデバイスの評価を行う. 私たちは慣れない土地を訪ねる時, 視覚的なナビゲーションシステムを使用することが多いが, 視線や意識が手元に集中してしまい街を十分楽しめなくなるばかりか注意力散漫になり危険である. 知らない土地こそ, 迷う事に気をとらわれずリラックスした時に多くの発見があり, 都市本来の良さが歩く人に伝わる. この点で, 現状のナビゲーションシステムは都市経験を損なわせている. そこで, 都市を楽しむ上で必要な感覚を損なうことなく使用できる触覚ナビゲーションシステムを手すりのインターフェースを用いて実現し, 都市経験の向上を目指す. この目的のもと, 直感性, シンプルな構造, 自由曲線を誘導可能などの特性をもったデバイスを実装し, SIGGRAPH2011にて実証実験を行った. その結果, 手すりのインターフェースが歩行誘導において十分な精度をもつ事が確認できた. また, 実際に都市でデバイスを用いてしフィールドワークを行い, アンケートによるユーザーフィードバックと, 使用に伴う言動の変化の観測を行った. アンケート結果や歩行速度に顕著な差がみられ,HAPMAP を使用する事により都市経験が向上すること, デバイス特性が実際の都市において有効である事を確認できた.
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