本研究では、災害時の情報伝達の迅速化を目指し災害情報共通基盤の提案と評価を行う。本共通基盤は、防災機関に既設されている防災情報システムの連携を実現する。災害のような緊急時には、防災機関同士が連携し住民へ迅速な情報伝達を行う必要がある。現状のシステムは各防災機関が独自に構築しているため統一性に欠け、他機関との情報共有が困難である。こうした問題は他機関との連携が重要となる災害時では住民への情報伝達の遅延といった重大な問題へつながる。
そこで統一した情報流通を行う共通基盤を構築し迅速な情報伝達を可能とする。統一した情報の流通を可能とするため、既存の標準形式や住民への調査から災害情報の形式を定義した。既設のシステムで生成された情報を定義した形式へ変換するため、ミドルウェアの構築を行った。新規システムではなく既設システムを活用可能な設計とすることで、導入コストが軽減でき普及につながる。共通基盤では情報の管理も重要となるため、アクセスコントロール等の情報制御機構を組み込むことで情報管理を可能とした。提案基盤を実装し、情報伝達の迅速性を評価した結果42分の時間短縮が確認された。結果を実際の災害時の時間経過と比較すると、迅速性が求められる風水害でも住民が安全に避難する時間を確保できる可能性が確認された。本研究では技術面のみならず導入コスト等の実用面も考慮したため、広く普及できる可能性があり被害の軽減につながると考える。

修士学位論文. 2010年度メディアデザイン学 第109号