認知症を大別すると, 脳梗塞の多発などによって引き起こされる脳血管性認知症と脳の変性によって引き起こされる変性性認知症に大別できる。また変性性認知症には, 認知症全体の疾患の約50%を占めるアルツハイマー型認知症と, 約10%を占めるレビー小体型認知症が含まれ, その他の変性性認知症としては前頭側頭型認知症もある。各認知症は, アルツハイマー型認知症は, 認知機能低下や人格障害を特徴とし, レビー小体型認知症は, 認知障害だけでなくパーキンソン病様の運動障害も併発するのが特徴であり, 前頭側頭型認知症は, 人格障害が顕著な認知症である。これらの変性性認知症の診断法は現在, 知能検査や画像診断が主であるが, 発症初期などは診断が難しく, 誤診が多いことが問題となっており, 生化学検査などからの客観的な指標が求められている。メ夕ボローム技術は代謝変動を網羅的に調べられ, 様々な疾患のバイオマーカーの発見や, 病理研究への応用がなされている。本研究はメタボローム解析を用いてこれらの変性性認知症, アルツハイマー型認知症, レビー小体型認知症, 前頭側頭型認知症についての診断方法を確立することを目的としている。本研究では, The Shankle Clinicとの共同研究で得られた認知症患者(アルツハイマー型認知症 : AD, 前頭側頭型認知症 : FTLD, レビー小体型認知症 : LBD)の血清, 尿, 唾液を解析した。統計解析からは, 各認知症の傾向を把握することに成功し, 特に同定物質に特徴があることが分かった。また, マンホイットニーの検定で健常者と認知症患者の間に差が見られていた複数の代謝物で, 各認知症の共通性と相違点を考察した。
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