近年, 個々人がクルマを所有して利用するより共同利用によって, 経済性を高めるカーシェアリングシステムに注目が集まっている. 日本では東京を中心とした都市圏において徐々に普及が進んでいる. しかしながら, 地方都市では事業としての採算性が低いため, 必ずしもカーシェアリングシステムは普及していない実態を, 主にこの事業を展開している企業への現地調査やインタビューから明らかにした. 事業として採算性が低い原因は, 地方都市におけるクルマの利用体系や保有意識の高さにあると考えられる. 地方都市においては, クルマは生活の必需品であり, 平日の通勤はもちろん, 週末にも買い物などに利用されている. そのため, 利用するごとに料金を払う現行のシステムでは, 東京など都市圏で展開されているビジネスモデルによっては採算性が見込めない.
本研究は, 地方都市で低所得者用の市営住宅に住む住民を対象とした新たなカーシェアリングシステムをデザインすることを目的としている.
以上のカーシェアリング事業は, 低所得者層が主に居住する市営住宅を対象として, 現地調査と訪問インタビューを通じて要求把握を行い, 利用者のコストや地元浜松への経済効果を考慮し, 複数のビジネスモデルを考案した. そこで, それらのデザインモデルを実現性, 有効性の評価軸を基に, 公共交通, 店舗を視野に収めてカーシェアリングを組み合わせた案をデザインした. このようにカーシェアリング単体ではなく, 公共交通機関と店舗を組み合わせることによって, 利用者へのインセンティブ, 浜松市への経済効果を高めることができると考察した. そうした新しいモデルを, 交通分野に精通している専門家に実現性・有効性の観点から詳細にレビューしてもらった結果, 地方都市においても低所得層を主な対象としたカーシェアリングシステムを普及できることが裏付けられた.
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