ITやデジタル技術、メディアとその社会への影響は、商業分野や広告分野だけでなく、近年は、高齢者に直結する医療や介護など、社会福祉に関連する公的分野においても数多くの調査や事例が見られる。
しかし、類似・先行研究、事例の調査結果として、情報発信や販促支援、安否確認や世代交流など、コミュニケーションエンターテイメントにおいて、「盛んになった・活発になった」という研究事例は至る所にあるが、では「どのように楽しめたか、どのように交流が深まったか」という点に関しては十分な解明がされておらず、本研究が貢献する意義と新規性があると考えた。
仮説を検証するため、対象者や機器を変えながら、5つの実験を行い、アンケートやインタビューによる質的アプローチに基づいて、分析・評価を行った。
その結果、仮説・命題として挙げた、「メディア・ITが高齢者コミュニケーションエンターテイメントの『双方向性』(言葉のキャッチボール)と『能動性』(取っ掛かり・キッカケ)に繋がる」ということが証明された。
また、高齢者の特徴・性格(一方的・自己中心的・昔話が多い、受動的・内向き・反応が遅い)を踏まえることの重要性、加えて、デジタルサイネージなどの新たなメディアだけでなく、文字や写真・映像など「既存の」コンテンツ、「回顧(懐古)的」なコンテンツの有用性を、再検証することが出来た。

修士学位論文. 2011年度メディアデザイン学 第182号