ライブドア事件を会計倫理の観点から見たらどのように評価されるのか, という観点から, まず, 日本公認会計士協会の倫理規則の基本原則および会社等の会員の責任規程を概観したうえで, 会社に属する会計担当者が会社内会計人の集団を作ることを目的として, 1923年に設立された英国における会社会計士協会を概観することにより, 会計プロフェッショナルとしての責任を検討する。
そのうえで, ライブドア事件の起点となった2004年9月期の株式交換によるK社取得時における交換比率の錬金術的な操作, 自社株のK社株主からの買戻契約締結と消費貸借による売却の実行, そして, 当該売却益を財源とした四半期ごとの増収増益発表による情報操作の経緯を検討する。さらに, 経理財務責任者の反対にもかかわらず, 連結経常利益予想50億円を公表した結果, 会社関係者が第3四半期で架空売上を計上せざるを得なくなってしまった。これは, 具体的な利益創出計画がないにもかかわらず, 自己の肥大化した欲望のみに従った最高経営責任者の罪である。
このような粉飾決算に対する会計監査人の判断と指摘は, 会計プロフェッショナルとして常識的であり適切であったが, 会社に拒絶されたため, 当該会計監査人は知らなかったことにし, 虚偽の証憑類の作成を求めて適正意見を表明してしまった。しかも, 会計監査人の意思決定には, 外見的独立性がなくなり関与社員を辞任し監査法人代表社員を退任した公認会計士が関与していた。
過去の経緯はあるとしても, 重大な影響をもつ不正および粉飾については阻止し, 修正させるか, 辞任するのが, 会計監査人および経理責任者の会計プロフェッショナル又は会計人としての任務であろう。
会社にしても監査法人にしても, その企業維持と成長は, リーダーの資質次第であり, リーダーは自らを律する必要がある。
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