今日, いわゆる金融資産の処理規約については, 制度的には, その保有目的に従って, 売買目的の金融資産は, 時価評価(かつ, その時価差額の損益計上), 満期保有目的の金融資産は, 償却原価評価(かつ, その償却原価差額の損益計上)とされている。そして, 現代会計理論の関心は, 主として, 制度的に規定されたそうした個々の処理規約の正当化を図ることにあるようである。逆に言えば, 同位の概念レベルにある売買目的の金融資産の時価と満期保有目的の金融資産の償却原価との関係, あるいは, それらの上位概念である金融資産一般の評価規約と, その下位概念である時価・償却原価との関係については, さしたる関心がないようである。そのために, 金融資産の処理規約は, 全体としてみるとき, けっして首尾一貫した体系をなしていないと言ってよいであろう。
本稿は, その点に格別の留意を払いつつ, 金融資産一般の処理規約を再構成することとしたい。
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