非営利組織の経営力を評価するには,まずその基準が必要である。営利組織である一般企業の経営力評価においては組織の目標を長期の維持発展として,それを基準とするが,非営利組織の場合も,人間が集まり,ある目的達成のために協力する,という組織としての性格を持っているので,その目標を長期の維持発展とすることができる。従って具体的には,利益をあげることが目的ではない非営利組織においても,その経営力評価には収益性と成長性という一般の企業評価と同じ基準を設定することができる。この企業評価アプローチを非営利組織である農業協同組合の経営力評価に適用すると,農協の目的は組合員への奉仕,目標は農協自体の長期の維持発展とすることができる。ここで目的とはその組織が存在する意義を示すものであり,目標はその目的達成のためのやや具体的な行動の指針・手段,という関係になっている。茨城県内全86農協を調査対象として経営力評価を行なったところ,農協のトップである組合長とトップマネジメントを構成する理事・参事に人材が不足し,農協経営方針のあいまいさ,戦略・長期計画・長期思考の欠如などが問題点として明らかになった。また,非営利組織と収益性の考え方がはっきりしていないため,職員の給料が低く,職員が活性化せず,中途退職が増加してしまうなどの問題も明らかになった。農協の目的である組合員への奉仕のためには一般企業と同様に収益性・成長性を重視し,組織の維持発展を目指すことが重要である。
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