米国,英国等におけるABC(Activity-Based Costing : 活動基準原価計算)についての議論は多様であるが,これらの議論は,(1)原価計算対象への原価の集計を問題にしていく方向と(2)原価の発生要因を?み業務の改善を図っていく方向とに分別して理解するのがよい。第1の方向の検討結果からは,(1)ABC提唱者のより正確な製品原価の主張には,回収計算の視点が抜け落ちていること,(2)ABCの提唱者には戦略的視点が欠けていること,(3)日米企業の間には,基本的考えに相違がみられ,それがABCに対する態度の違いとなって表れてきていること,等が指摘できる。また,第2の方向の検討結果からは,日本企業にとっては,有効に機能している諸システムがあるだけにABC導入によるコスト・ベネフィット関係でネットのベネフィットが得られるのかが問題であることを指摘できる。
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