発展途上国の中でも,ブラジルは最近とみに注目をひき,その発展の過程に関して,さまざまな角度からの検討がなされてきた。事実,これまでの研究文献も多種多様にのぼり,いわゆる中南米やブラジル専門家とみられる人も決して少なくはない。それにもかかわらず,ブラジルは常に興味深い研究題材をあたえてくれるし,殊に,経済発展のプロセスやそこに生ずる経済制度やメカニズムとのコンフリクションを見極めようと思うものには,たしかに恰好なケース・スタディーの対象を提供してくれるといってよかろう。本稿はKeio Business Forumに筆者が発表した1970年のブラジル視察の覚書に統くものであって,主として,ブラジルの経済発展のパターンとその特徴を明らかにすることからはじめ,工業化,と貿易・為替政策,工業化のブラジルにおける条件と輸入代替の特質更に経済発展のコンフリクションを検討して,輸出多様化への発展プロセスを提示したいと思う。
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