中世後期、ヨーロッパのほとんどの都市では教区教会の全財産、さらには下級聖職者の人事も含め教区教会全体が、市参事会の任命した教会建設財団 (fabrica ecclesiae) の長である世俗の教会後見人により管理されていた。ドイツ中世都市史では長年、この現象は教会の資産管理の世俗化・公営化を意味していると考えられてきたが、近年、ベルント・メラーが『帝国都市と宗教改革』で提唱した、中世後期の都市では市参事会が市民の宗教生活にも責任を負っていたという意味での「聖なる共同体」という宗教改革前夜の中世都市に対する概念の有効性が評価されつつある。では、市参事会は一体どのようにして、市民の宗教生活を保証し、その責任を果たし得たのだろうか？本稿では、史料の豊富な帝国都市ニュルンベルクを例に、市参事会が任命した役職である教区教会後見人の活動を主に証書から分析し、先行研究に欠けていた教会建設財団あるいは教会後見人のもつ人的つながりを解明することで、教会後見人や市参事会による市民の宗教生活への責任の果たし方を明らかにしていくことを目的にした。本稿では、教区教会の財政が有力政治家である市民個人の集金力に依存していた体質、また教会後見人たちは、教会財産の保全や寄進の円滑な実行だけでなく、市民たちが命日ミサに必要な資産の整えるため援助する姿が明らかとなる。

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