本稿は, 資格者団体における無報酬の役職者という, ボランティア団体でない組織での, プロフェッショナルによるボランティアの組織行動について考察する。有給休暇も固定給もない, 独立開業によって生計を営む資格者が, 機会費用を負担しながら無報酬で役職を引き受ける動機づけや, 役職者としての仕事の満足度, ボランティアに対する考え方について, 仕事に関するコミットメントと併せて検討を試みたい。そこで行政書士会を被調査団体とし, その役職者に対して定量調査を行った。
仮説は大きく4つの群に分けて提示し, 統計的に検証した。仮説1群は, 役職者がどのような考え方を持つ人々であるかについての仮説である。検証の結果, 役職者は日ごろから「利他的」な考え方を持ってはいるが, 役職を引き受けている動機づけとしては, 「内発的」ではなく, 「外発的」あるいは「非自発的」な動機づけによることがわかった。仮説2群は, ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」に基づく仮説である。検証の結果, 役職者の役職活動における満足要因は, 「衛生要因」ではなく, 「動機づけ要因」とされているものである。またハーズバーグで「衛生要因」とされる「組織運営」は, 役職者にとっては「動機づけ要因」に含まれる。また一般的に仕事の満足要因とされている「承認」は, 役職者にとっては満足要因ではないことがわかった。仮説3群は, 組織コミットメントに, 他の要因がどのように関係しているかについての仮説である。検証の結果, 行政書士会に対するコミットメントを高める要因は, 「プロフェッショナル・コミットメント」, 「利己性」, 「利他性」, 「内発的動機」, 「動機づけ要因」であることがわかった。最後に仮説4は, キャリア満足感に他の要因がどのように関係しているかについての仮説である。検証の結果, 行政書士会に対するコミットメントが高いからといってキャリア満足感は高くならないことがわかった。
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