現行会計に関する評価学説については, 大別すれば, 計算対象の論理を捨象する立場と, 計算対象の論理を組込む立場とがあり得るが, 今日, 一般化している意思決定有用性学説は, 前者に属しているとみてよいであろう。この学説については, 拙稿「評価規約における収益費用観・資産負債観の意義―意思決定有用性学説 (1) (2) (3)―」 (『三田商学研究』第61巻第5 ・6 号, 第62巻第1号)において, 計算対象の論理を組込んでいないがゆえに, 理論的に破綻していることを筆者なりに明らかにした。
現行会計を合理的に説明する説明理論を構築するためには, 計算対象の論理を本格的に組込まなければならないであろう。そこで, 本稿では, 主観のれんの有無をメルクマールにした事業資産・金融資産分類を組込んだ斎藤学説を取上げることとしたい。
この斎藤学説は, しかし, 他方で, 配分・評価分類も採用しているので, 事業資産・金融資産分類および配分・評価分類というふたつの分類を土台にしている点, しかも, その両分類が等価的同格的な位置を占めている点に, その特質が認められるのである。
なお, 斎藤学説については, 筆者は, すでに, 笠井[2010]において批判的に検討しているが, ここでは, 評価規約を中心にして論ずることとしたい。
本稿では, 斎藤学説の概要を, 「事業資産・金融資産分類と評価規約」, 「配分・評価分類と評価規約」, そして「事業資産・金融資産分類と配分・評価分類との関係」というみっつの観点から, 整理することにしたい。
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