経済学における人的資本論では教育を投資と考え, その登場以来, 教育が個人の賃金, 生産性さらには一国の成長にどのような影響をもたらすのかについて議論されてきた。特に, 開発分野においては, ミレニアム開発目標においても「初等教育の完全普及の達成」が掲げられており, 教育は開発に資するということがすでに前提となっているようにみられる。しかし, 経済学における実証的な検証においては, 教育と経済成長の関係は未だにはっきりしたものではない。そこで本研究では教育が経済成長をもたらすということに懐疑的な見方を示し議論になったPritchett(2001)を模倣しつつ, 最も新しいデータを用いてその関係を再検証することを試みた。また, インセンティブという指標をモデルに投入することで, 教育投資のリターンが高まるような環境であるか否かを示す変数を加えた場合, 人的資本と経済成長の関係に変化が生じるかどうかも分析した。その結果, Pritchett(2001)と同様, 多くの推計式において, 人的資本と経済成長の関係をあらわす係数は統計的に有意にならなかったが, インセンティブ指標の一つである輸出対GDP比率を用いた推計では人的資本は経済成長に影響を与えることが明らかになった。
|