【問題意識】
現在、日本経済は、輸出総額の減少、国内消費の減少、円高、少子高齢化など危機的状況にある。H20度の国税庁が公表している統計資料でも、普通法人の会社等259万社のうち、184万社（約7割）が欠損法人で、企業経営の深刻さが露呈されており今後日本経済がより活性化するた
めには企業再生という分野の発展が必要とされている。
経済学的な観点からは、法的整理にせよ、私的整理にせよ、その企業価値が最大になるような形で処理されることが望ましい。そして、倒産時の意思決定として、再建可能な企業が再建され、清算すべき企業が清算されるのかという問題がある。再建可能な企業が再建されていないとすれば、それは社会全体に対して不利益が生じている。逆に、清算されるべき企業が再建されているのであれば、これはまた社会全体に対しての不利益を生じていると言えるであろう。例えば、2001年に施行された民事再生法申請した上場企業で再上場を果たした企業は、103社中わずか1社しかない。また、103社中1社が会社更生法に、9社が破産に移行している。企業再生時に選択される手法がそもそも誤っているのであれば、企業再生自体の失敗を招きかねず、また社会全体に対して不利益が生じてしまう。
【統計・分析】
2000年（民事再生法施行）から2010年までの上場企業にて日経BP、帝国データバンク、四季報でデータ取得が可能であった私的整理、法的整理（民事再生法、会社更生法、破産申請）を行っている企業117社を統計対象とし、二項ロジスティック分析を用いて要因を推計した。その結果、経済合理性だと判断する要因（業界平均との原価率の差、担保債権比率）も手法選択に影響していたが、経済合理性以外の要素（対象企業の規模、メインバンク割合、社長在任期間、大株主比率）も再生手法選択に影響を与えることが分かった。
【本研究の意義】
企業再生手法を事前に予測可能となることによって、各ステークホルダーにとって有益な行動を検討、実施することが可能となると考えられる。また、企業再生の分野における先行研究では検討されてこなかった再生手法の選択フローを考慮したことにより学術的に企業再生の分野の発展に寄与することが出来たならば、幸いである。

修士学位論文. 2011年度経営学 第2672号