企業が成長していくためには、今までの研究や調査から明らかであるが、経営者が重要である。そして、企業成長のためには、経営者は、経営者としての機能を果たす必要があるだろう。その経営者機能を執行するためには、経営者としての能力が必要である。しかし、経営者能力は、状況適合的•条件的であり、企業成長段階ごとに求められる能力が変化すると考えられる。経営者は、企業成長段階ごとに、経営者能力を拡大していかなくてはならない。このような状況の中、経営者は、はたして単独で力を発揮してきたのだろうか。経営者能力を満たすことには、限界があるのではないだろうか。
本論では、経営者の周りにいる人々、つまり補佐役に焦点をあてたものである。補佐役は、今までの経営学で取り上げられることは少なかったが、企業にとっては重要な存在である。実態が解明されていない「補佐役の役割」について研究することには、経営者がどのような形で周りの人々に支えられ経営者としての機能を果たしているのかということが理解できると考えている。フィールドワークを用いて調査した結果、補佐役は12の役割を担っていた。①フィルタリング②非公式な現場のモニター③鼓舞④現場へのアドバイザー⑤職場のムードメーカー⑥翻訳者⑦スパイ⑧ショックアブソーバー⑨トップの権威を高める⑩社外とのリエゾン⑪非公式的な交渉者⑫駆け込み寺。
本研究を通じて補佐役の役割は上にある12個見つけることが出来た。また先行研究にはない新たな役割は７個あることがわかった。新たな役割が発見できた理由としては、補佐役は組織において置かれている状況は、トップや現場、社外といった間にいるという複雑な構造の中で働いており、先行研究で言われている通りの、単にトップの補佐をしているだけではなく現場や社外といった所にも何らかの働きかけが必要であるからだと考える。
また組織内から補佐役と思われている人物3人に観察やインタビューを通して、補佐役とは「補佐役」とフォーマルな職位で固定された役割を果たすものではなく、職場において異なる場合や「求められる役割」を各々が柔軟に果たしていたことがわかった。その役割は単に管理職（オーナーなど）の「お手伝い」「補完」ではなく、職場における「文脈」を自ら考え、積極的に「役割」を自らが定義し果たしていく存在であると考える。

修士学位論文. 2011年度経営学 第2618号