本研究は、大型スクリーンを介した遠隔パネルディスカッションにおける、観客が討論へ参加するためのコミュニケーション・システム「マインドシェア」の設計を行った。マインドシェアは、観客からの意見や気持ちを可視化し、それら情報を大型スクリーンの映像に対しオーバーレイ表示させることで、会場内での情報共有を図り、登壇者がリアルタイムにそれら情報をコンテンツへ反映できるシステムである。現在、デジタルコンテンツを用いた新しい映画館の活用法としてODS(Other Digital Stuff = 非映画コンテンツ)が率先的に取り組まれている。それら事業の一貫として、イベント等の中継映像を大型スクリーンで鑑賞するライブビューイングがあるが、あくまで映像の視聴を目的としており、会場内でのコミュニケーション形成には至っていない。本研究では、第25回東京国際映画祭の公式プログラム、4K双方向ライブビューイングによる遠隔パネルディスカッションにおいて、マインドシェアの評価実験を行った。この実験を通し、本来は第3者の立場である観客が、登壇者同士の討論に間接的に参加し、さらには討論の内容に影響を与えたことが考察できた。本研究では、観客が討論へ参加するためのシステムとして、マインドシェアが有効であったことを述べる。

修士学位論文. 2012年度メディアデザイン学 第248号