本論文では、コミュニケーション促進ツールとして提案する新たなスタイルの回想法的デジタルコンテンツが加速化していく高齢化社会において、高齢者向けの娯楽やコミュニティ活性化の切っ掛けとして有効性があるかについて検証する。
本研究では、高齢者コミュニティ活性化へ寄与するための研究アプローチとして、回想法に基づき他人や他世代の人との交流やコミュニケーション促進の切っ掛けになるデジタルコンテンツを提案する。楽しい思い出作りやQOL向上のためのレクリエーション、コミュニケーションスキルや人間関係の形成などを目的としている一般的な回想法（レミニッセンス）の概念を取り入れ、二種類のデジタルコンテンツを作った。既存の回想コンテンツの限界の改善と差別化を図るために、個人史と社会的な出来事のコンテンツをストーリーテリングの要素を入れて組み合わせたり、ノスタルジックな大衆文化をクイズ形式にするなどの工夫をした。
高齢者を対象に4回にかけ実験を行い、実験中の特徴的なコメントを記録し、アンケートとフィードバックをしてもらった。その結果、本研究で提案した新たなスタイルのデジタルコンテンツは、研究の目的であったコミュニケーション促進ツールとしての有効性において概ね肯定的に評価できる一方で様々な課題も見つかった。

修士学位論文. 2011年度メディアデザイン学 第152号