本研究は、アート鑑賞をより豊かにすることを目標に、鑑賞者が感想などを投稿し、公開、共有する鑑賞支援のデジタルサイネージシステムをデザインする。また、生活と密着した都市の中に鑑賞の場を広げ、「どこでも、いつでも、だれでも」という新たなアート鑑賞支援を目指す。アート・デジタルサイネージを使って、作品を鑑賞しながら、感想を積極的に共有する経験は、能動的に鑑賞できる。他の鑑賞者と共有することによって、さまざまな着眼点から鑑賞する経験は、調査対象は作品と向き合い、それとの対話を公開し、違う視点から行なわれた鑑賞である。さらに、デジタルサイネージの汎用性によって、普段、美術館やミュージアムなどに足を運ばない人でも、都市空間でアート鑑賞ができる。本論文では、鑑賞経験の乏しい鑑賞者を対象とし、アート・デジタルサイネージのプロトタイプとアート・デジタルサイネージによって人々が得られる経験を、ユーザーを対象に行った参与観察と質的データ分析法によって評価する。

修士学位論文. 2010年度メディアデザイン学 第112号