本稿では, 保険負債について, 従来の会計で想定される評価と経済上想定される評価を比較し, その相違を検討する。会計上の保険負債を保険者の「元手」を表す勘定として捉えると, 保険負債は保険料額を基礎にして評価され, その評価額の算定方法には過去法と将来法の二つがあることを述べる。一方, 経済上は, 保険負債は保険契約という「リスクのある投資」を示す勘定として捉えられ, それは保険契約が有すると見込まれる価値で評価されること, そして, その価値の評価額は, 確実性等価法により算定される期待キャッシュフローの現在価値額(VCE)であることを論じる。
会計における将来法の処理と経済上の処理は, 「事前の期待の事実への変化」が仕訳で示される点において共通であるが, ただし, 保険負債の評価額は両者で異なる。会計上の将来法による保険負債の評価額は, 「経済上の保険負債の評価額に, 保険契約の残存期間中の各期に帰属する超過利益の現在価値額を加算したもの」と整理されるが, これは, 金額としてはむしろ会計上の過去法による評価額と一致する。保険負債の会計上の評価と経済上の評価の違いは, 両者における超過利益の捉え方の違いから生じる。
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