本稿の目的は, 企業再建において避けては通れないリストラクチャリングの場面で問題になるであろう2つの問題点, 即ち解雇法制と役員報酬法制について, 問題点を指摘し検討することにある。より具体的には, まず前者については, 従業員の解雇について, 裁判所において解雇権濫用法理が採用されており, 同法理の運用が厳格であるが故に企業再建に支障が生じているのではないかという問題点, また後者については, 高額な役員報酬について, 取締役報酬額決定後に株主総会により同報酬を無報酬とする旨の決議の可否について判断した判例との関係で, 同判例法理の射程が企業再建を必要とする会社においても及ぶのかという問題点を考察する。
前者については, 4つの観点, 即ち, 経営判断原則との関係, 従業員の権利との関係, 司法判断との関係, 他の制度との関係から考察している。その過程において, 解雇法制は国によって様々であることから, フランス, ドイツ, イギリス, アメリカといった主要国の解雇法制を参考にしながら議論を進めている。後者については, 主に事情変更の原則, 最高裁判例の射程という観点から検討した。その過程においては, 最高裁判例のみならず主要な裁判例にも目を配り, そこで議論されている内容を盛り込みつつ論証を心掛けた。
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