減損会計については, 笠井[2005]において, 設備資産についての減損だけを取り上げ, 主として主観のれん説と対比しながら, FASBによって提唱された時価評価の妥当性を主張した。その結論は, 現在においても, 妥当であると考えているが, しかし, 一方, そこでは, FASBの処理方式と主観のれん説のそれとの比較がなされているにすぎず, IASBの処理方式は, 検討されていない。他方, 筆者のその当時の関心は, 主観のれん説それ自体の理論的欠陥の究明にあったので, 主観のれん説の減損に関する主張については, 米山[2003]ではなく, 斎藤[2001]に依拠したため, 米山[2003]において展開されたFASB方式の批判については, 何もふれていない。そこで, それらの点についての補足の必要性をかねてから感じていた。
さらに言えば, 同じく減損と言っても, 設備資産と金融資産とでは, その処理方法が, 大きく異なっているのに, 金融資産を取り上げていないというのも, 一方的にすぎよう。したがって, 満期保有目的金融資産の減損処理についての私見を展開する必要性も, 感じていた。
そこで, 当面, この2点につき, 補充しておきたい。
本稿では, 設備資産の減損を取り上げ, IASBの処理方式につき, 資産評価の側面, 損益計算の側面, および計算方式の側面から批判的に考察する。
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