当稿の目的は, 企業における知識をKarl Popperの3世界論や進化論の視点から議論し, その性格を明らかにすることにある。Polanyiの暗黙的・明示的知識は, 個人的・主観的であり, 客観的議論が可能な知識ではない。科学的理論, 制度, 規則といった世界3の知識の進化は, 生物体の進化と違い, 基本的にダーウィニズムのプロセスをとりながら, 偶然性とランダム・ウォークではなく, 熟慮と定向性によって行われる。 ルーティン, ケイパビリティ, 組織構造, 戦略, 企業理念といった企業における知識に関しては, 企業目的に関わる理念, 戦略というものは, 環境からの厳しい(外部)淘汰を受けつつ, 強い内的淘汰圧を他の知識に与える。ケイパビリティは, 以上のプロセスの結果, 自己強化性を持つ。
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