フィリピンのような発展途上国では, 多くの現地サプライヤーは中小企業であることが多い。彼らの技術革新能力の向上のためには技術習得が不可欠である。したがって, 現地サプライヤーの技術革新能力の向上を実現する上では, 現地中小企業の技術習得メカニズムやプロセスを解明することが中心的な論点となる。しかし, 技術習得には一般的にコストや時間がかかり, また, 技術へのアクセスも容易ではない。発展途上国においては, 必要な技術に関する情報や技術そのものへのアクセスをするための道筋が必要となり, そうした情報やルート確保のためには企業の組織的な努力が必要となってくる。一方で, 企業以外の諸組織(フィリピンの場合では, 多国籍企業子会社, 現地サプライヤー企業, 大学などの研究機関など)がナショナル・イノベーション・システム(NIS)を構成することも, 企業独自の努力とは別の次元で, 技術習得において重要な役割を担っている。本論文では, フィリピンのNIS の構成要素の可能性を特定し, 特にその中でもホスト国に進出した多国籍企業子会社の果たす役割が大きいことを議論する。NIS の企業間連携と企業間リンケージが生み出すシステムに焦点を当て, 企業間連携の効果をより明確に提示し, 多国籍企業子会社の役割を明らかにするために, グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の議論とNIS の議論との連結を試みる。GVC の議論の中でもリード企業の役割に注目し, ホスト国における多国籍企業子会社のリード企業としての企業間連携への役割について, NIS とGVC の観点から述べる。在フィリピン日系多国籍企業のヒアリング調査のデータを用いて, フィリピンのNIS の構成要素を明らかにし, どのような役割を日系多国籍企業がフィリピンのNIS やGVC に果たしているのか考察し, 結論に至る。
This research focuses on organisational linkages between MNE subsidiaries and participants in National Innovation System (NIS) focusing on Multinational Enterprise (MNE) subsidiaries' governance structures in sectors producing for global markets, structures we refer to as Global Value Chains (GVC) in the Philippines.
Based on the interview data from Philippine, we try to discuss different roles of MNE subsidiaries and potential inter-organisational linkages within the GVC and within the framework of NIS.
We therefore explore significant inter-organisational linkages between MNE subsidiaries and local suppliers and investigate inter-organisational linkages as key drivers affecting suppliers' technological development, hence upgrading level of the NIS in a host developing country like the Philippines.
|
