本稿の企図は, 定利獲得目的金融資産(いわゆる満期保有目的金融資産)に関する統一的測定規約の索出にあるが, そのためには, ふたつの論点をクリアーしなければならない。すなわち, 第1の論点は, 受取利息の処遇の相違にかかわる売掛金・貸付金・割引債の測定規約の相違である。そして第2の論点は, アキュムレーション法(利息法)に関するヴァリエーションの存在である。この点は, ①利息法に対する定額法の存在, および②投資社債等の処理につき, 計算プロセスの相違したアキュムレーション法(以下, 「アキュムレーション法」と表記する)およびアモーチゼーション法の存在, というふたつの問題点に細分化される。
これらの論点のうち, 第1の論点および第2の論点①については, 前稿(拙稿「定利獲得目的金融資産の会計処理の再構成(1) : 測定規約の統一性を求めて」『三田商学研究』第56巻第4号)において論じたので, 本号では, 第2の論点②を俎上に載せる。
今日, 投資社債等については, 発行額評価法に基づいて, 入帳時には, 券面額ではなく, 発行額(つまり取得原価)に基づいて評価されている。つまり, 名目額ではなく, 実質額で評価されているわけである。それにもかかわらず, 受取利息額については, 現金収入額に基づき, 名目上の受取利息額を計上しているのである。そのために, その名目受取利息額を実質受取利息額に修正する仕訳が, 必要になる。このように, 企業の経済活動の実質とは異なる会計処理を行なったために, 企業の経済活動に伴う割引現在価値の変動を忠実に表現したアキュムレーション法(利息法)ではなく, 「アキュムレーション法」およびアモーチゼーション法になってしまったのである。
したがって, 投資社債等に関する「アキュムレーション法」およびアモーチゼーション法は, いわば簡便法に他ならず, その正則法に基づけば, アキュムレーション法(利息法)に帰一するのである。かくして, 簡便法を排して, 正則法に依拠すれば, 理論的には, 定利獲得目的金融資産については, アキュムレーション法(利息法)に基づく割引現在価値という統一的測定規約が存在するのである。
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