今日，多くの企業が大量生産品でありながら顧客ニーズに対応した受注生産品である「マス・カスタマイズ製品（mass customized products）」を顧客に対して提供しつつある。しかし，マス・カスタマイゼーション研究の多くは，ケース・スタディや分類研究の状態にあって，なぜ，いかに，消費者はマス・カスタマイズ製品を選好するのか，という疑問には，いまだに充分な解答をなしていない。本論は，マス・カスタマイズ製品に対する消費者選好を規定する要因を消費者行動論の枠組によって捉え，消費者データを用いて実証分析を行うことによって，この問いに答えようとするものである。多属性アプローチによる理論的検討の結果，マス・カスタマイズ製品は，ニーズ合致優位，ユニーク性優位，金銭的コスト劣位，および，非金銭的劣位を有するであろうことが仮説化され，因果モデルとして描かれる。また， 2 つの製品に関する消費者データを用いた実証分析の結果，これらの規定要因の重要度には製品カテゴリー間で差異があるであろうことが探索的に見いだされる。認知的に高関与な製品カテゴリーについては，マス・カスタマイズ製品が有するであろうニーズ合致優位が重視される一方で，感情的に高関与な製品カテゴリーについては，マス・カスタマイズ製品が有するであろうユニーク性優位が重視されるかもしれないこと，さらに，非耐久財の製品カテゴリーについては，マス・カスタマイズ製品が有するであろう金銭的コスト劣位が問題視される一方で，耐久財の製品カテゴリーについては，さほど問題視されないかもしれないことが知見として論じられる。

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty
50周年記念論文