本稿では機能子会社に対するバランスト・スコアカードの適用について,パイオニアシェアードサービス㈱のケースを検討しつつ考察している。企業グループを構成する子会社はその役割から事業子会社と機能子会社に大別できるが,機能子会社はグループ外部の企業から収益を獲得することよりは,グループ内部の企業に経理や人事,総務などの本社管理部門が提供するのと同様のサービスを提供することを主たる目的とする会社である。機能子会社は単体では通常プロフィットセンターとされるが,グループ連結管理ではその役割からコストセンターとして位置づけるのが妥当である点にマネジメント上の難しさが存在する。さらに,機能子会社はコスト削減と業務品質の向上というトレード・オフの関係にある目標を同時に達成することを求められるが,その達成には,財務の視点だけではなく,顧客,業務プロセス,学習と成長という複合的な視点について評価指標を持つバランスト・スコアカードによるマネジメントが有用である。また,パイオニアシェアードサービスのように,通常設けられる4つの視点のほかに連結本社の視点を設けることで,機能子会社のグループ経営における位置づけを,グループ会社,特にグループ本社にアピールすることができる。
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