労働者に求められる技能のオートメーションに伴う変化に関する議論は,相矛盾する3つの説が対峙するなかで,袋小路の様相さえ呈している。この議論における決着点と論争点を整理すると,そうした状況に陥っている重要な要因の1つは,技能という概念に係わる混乱のなかに見出せる。そこで,本論では,論争点の解決に向けて,技能に関する検討を行った。そのなかでは,「仕事の仕方に変化をもたらす要因への対応」に注目する,技能に対する視点が提示される。そして,オートメーションの進んだ今日のそして将来の職場生活を解明するうえで,技能に対するそうした視点が,どのような意義を有するものであるかが示される。それはまず,自律性と複雑性という,技能の重要な側面から検討される。さらには,職場生活の基本的枠組を規定する人的資源管理にアプローチするうえで果たす役割という点から検討がなされる。
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