およそ88%の財源を,目的税的性格をもつ社会保険料と,国庫負担金とに負っている公的医療保険制度を通じて,医療サービス市場には,対国民所得比6%台の補助金が与えられている。この補助金の水準と配分先とをめぐって,保険者と医療供給者とを中心とした政治経済問題が,喧しく論じられることになる。そこで本稿では,医療サービス市場をとりまく政治経済環境のなかで生じる問題の様相を,医療供給者ではない第3者が把握するための条件の整備を企図して,医療サービス市場のもつ経済特性と制度特性とを検討してみる。具体的には,このサービスの派生需要である看護労働力のいわゆる不足問題を考察するために,医療サービス市場における消費者主権の特性を分析する。そして,医療サービス市場では,価格競争が展開されている可能性は薄く,このサービスの経済特性を映して,医療供給者の間では,いわば威信獲得競争が展開されているのではないか,という仮説を提示する。
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