合併・買収を会計写像する場合,その結合形態が法的実体の消滅を伴うか否かにかかわらず,したがって,合併会計(個別会計)と連結会計とをことさら区別せず,「企業結合会計」とするのが国際会計基準の方向である。しかし,わが国の会計制度は,商法・税法の影響下にある個別会計とそれらにとらわれない連結会計との2本立てとなっており,かかる企業結合事象について,合併会計と連結会計とを別個に論じることが多かった。そこで本稿では,部分所有の子会社を合併する場合のモデルケースを想定し,その際の合併会計処理と連結会計処理(資本連結)との関係を検討する。ケースとしてとくに,合併時に問題となる抱合株式について,消却するケースと自己株式を割り当てるケースの2つを設定する。合併時の会計処理の前提として,(1)個別会計上の投資株式の評価法としての原価法と持分法,(2)連結会計上の資産・負債の再評価および少数株主持分の算定における実体概念と親会社概念,を想定する。また,合併・連結会計として,(1)持分プーリング法的-額面基準による資本増加,(2)パーチェス法的-額面基準による資本増加,(3)パーチェス法-発行価額基準による資本増加,の3つを検討する。なお,(1)と(2)は,わが国固有の会計処理である。主たる結論は,以下の通りである。(1)抱合株式の消却のケースでは,(1)わが国固有の合併会計処理は,連結会計処理と整合性がないこと,(2)パーチェス法処理を適用しても,合併会計(個別会計)と連結会計は一致しないこと,(3)しかし,(2)において,個別会計上,持分法を導入すれば,合併会計と連結会計との整合性が図れること,が判った。(2)抱合株式への自己株式の割当-売却のケースでは,(1)わが国固有の合併会計処理の特徴は,ケース(1)と同じであること,(2)パーチェス法処理を適用し,個別会計上,持分法を導入しても,「資産に関する取引説」にしたがう処理では合併会計と連結会計との整合性が図れないこと,(3)自己株式の売買について,「資本取引説」に則して処理すると,上記(2)について,合併会計と連結会計との整合性が図れること,が判った。
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